手漉和紙を支える見えない技

手漉和紙を支える見えない技
―鳥取に受け継がれる文化のかたち―

鳥取市歴史博物館で開催中の「とっとりのお宝おひろめ」では、
新たに鳥取県の文化財に指定・選定・認定された7件の貴重な“お宝”が紹介されています。
建造物や考古資料、工芸品、庭園、無形文化財など、
鳥取に息づく多様な文化の一端を知ることができる内容です。

なかでも注目したのが、鳥取県で初めて「選定保存技術者」として認定された
手漉和紙用具(簀)製作技術保持者・小畑文子さんの仕事です。

簀(す)は、手漉和紙をつくる際に欠かせない道具。
漉き槽の中で紙料を均一にすくい上げるために用いられ、竹片子や萱片子、絹糸、桁金具など、繊細で複雑な要素から成り立っています。
その精度が、和紙の表情や品質を大きく左右します。

小畑さんは、母のもとで簀編みを学び、以来50年にわたり多様な規格の簀を製作・補修してきました。
かつては鳥取市鹿野町にも簀を編む家がいくつもありましたが、今では全国でも数人しかいない貴重な存在となっています。

手漉和紙の背景には、紙を漉く職人だけでなく、その道具をつくる人々の技と工夫が息づいています。
展示を通して、和紙文化を支える“見えない手の技”に静かに思いを馳せるひとときとなりました。

本展を通じて、文化財を支える多くの人々の技と、その継承の重みを知ることができました。
和紙づくりを支える確かな技の継承に、あらためて日本のものづくり文化の奥深さを感じます。

とっとりのお宝おひろめ
会期:2025年11月8日(土)〜12月21日(日)
会場:鳥取市歴史博物館やまびこ館(入場無料)